3.著作物とは何でしょうか(第2条第1項第1号)

美術作品とか、音楽の楽曲とか、小説とか、映画とか、どれも、「著作物」ということが出来そうですね。
しかし、すべての作品が著作物ということではなく、著作権法では、どのようなものを指して「著作物」と呼ぶかが決められています。
第2条は定義規定と呼ばれ、法律の上で、何をどうやって定義するかが書かれています。

第2条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1)  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

では、それぞれどういうことを指すのでしょうか。

「思想又は感情を創作的に表現したもの」とは、人間の考えや思いを頭の中で考えたり思ったりしているだけではなく、表現していなくてはならないということです。
著作権法は、「表現」に対して保護を与える法律です。

さらに、誰でも思いつく、あるいは、ありきたりな表現ではなくて、「創作的」に表現されたものでなくてはなりません。 

この条文からいえることは、まず、人間の表現でなくてはならないということです。
法律上、動物や機械は、思想や感情を持つ「人」には該当しません。
将来的には人と同等かそれ以上の知能を持つ動物や人工知能が生まれる可能性はあり、その時には、「人」に相当する存在となる可能性は否定できませんが、現時点では、どんなに器用かつアーティスティックな象でも、著作者にはなれません。 

次に、考えただけ(アイデア)では著作物にはならず、何らかの形で表現していなければなりません。
どこまでがアイデアで、どこからが表現かということは、分野によってはとても難しい問題です。
美術の中で考えると、構図や対象物を頭で考えた時点ではアイデアですが、キャンパスにその絵を描くことが、表現したことになります。

さて、創作的な表現とはなんでしょうか。
これは、作者の作者としての個性があらわされていたらそれで足るとしています。
著作権法は、価値ある作品のみならず、値段のつけようのないいたずら書きであっても、「創作的」な表現であれば保護が与えられますし、作者の個性があればそれでいいわけですから、作品がどの程度の価格で取引されるか等は、著作物であるか否かには関係ありません。(2017.5.15)